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降り立つところ 9

 母親に呼び出された。うまく断ることができずこうして彼女を待っている。どこにでもある喫茶店。うまくもまずくもないコーヒー。ナイマンの曲に混じって、あちらこちらで新聞のページをめくる音がし、めずらしくタバコの煙が充満する。約束の時間はまだずいぶん先だ。起きてから落ちつかず、早く来てしまった。
 暇つぶしに考えことをする。

 「仕事」  ヤル気はない。もう辞めてもいい。望んで就いた職業でもない。かと言って何か別にしたい仕事があるわけじゃないが。貯金なら少しある。家賃を含め、月に15万使ったとしても2年は生きてゆける。そのうち本当にやりたいことが見つかるかもしれない。いあ、無理だな、きっと。自分には見つからないだろうな。

 「ひとりでいる」 たいして気にはならない。ひとりでいることのほうが楽だと思えることが多い。でも正直、それと同じくらい寂しさを感じることだってある。難しいな。どちらかを極端に選択できるわけではない。そういうことくらいわかっているが、難しいよ。

 「幸せって」 贅沢を並べればきりがないけれど・・・・・たった一人でもいいから、誰かに理解され愛され、その人を理解し、愛し・・・・・つまり、孤独ではないということだ。
 没頭できる何事かがあって、周囲から認められる。それは社会と繋がってるということだな。
 「ふーっ」声に出して溜息をついた。繰り返されるナイマンのフレーズが疎ましく感じる。派手なカウベルの音がし入り口の扉が開いた。数年ぶりにみる母親の姿だ。レオナール風のワンピースに身を包んでいる。相変わらずの派手好きだ。
# by temanekihitsuji | 2009-03-20 21:10 | 裏ひつじ

癒し 癒され

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昨日勢い余って 更新しすぎたので 改めて今日書くことに(笑)

tonericoにて がま口教室という名のお茶会に参加。


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参加者は
noji まゆさん
ぼちカフェ あささん
家ie mukuさん
小鳥食堂 くみよん

tonericoけーこ先生に 丁寧に がま口の作り方を
教えていただきました。

ちくちく手縫いしながら 美味しいものいただいて 喋って。

作り始めると 無心になりながらも  聴き耳立てて 口挟んで
しっかり食べて。。。

いやー楽しい時間を過ごせました。
 

今日も爆笑トークショーでした。
まゆさんお疲れさまでした(笑)

けーこさんのお手製 塩チーズケーキとサイフォンコーヒー
とっても美味しかったです。


前もって予約していた?けーこさん作塩チーズケーキと
みなさんからの差し入れで 我が家はお菓子がいっぱい。
うちのセブンは大喜び。

私好みの色と柄のがま口 愛用します。

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# by temanekihitsuji | 2009-03-18 23:13

降り立つところ 8

 そしてある日。ある日。ある日。
「ピシッ」
「パシィッ」
「パチンッ」
 空間を裂くような音が私の頭の中で激しく鳴った。夜中、便所に行きたくて目が覚める。ぼんやり、うっすらと部屋が明るい。祭壇があることを初めて知った。祖母の写真が飾られている。祖母は写真になったのだ。
 ほどなくして施設にあずけられた。年上の女の子から性的なイタズラをされた。私は生まれて初めて射精した。毎晩毎晩、イタズラされて。毎晩毎晩、射精した。やがて大人の知るところなり、私は別の施設に送られた。そこは何もないところだった。天国でも地獄でもなんでもない、すべてがフラットな場所だった。私は学校に行かず。毎日そこで詩を書いて暮らした。どこかで誰かが、私の書いた詩を必要としてくれている気がしていた。だが実際は誰も読むことはなかったし、単なる幻想だとも知っていたが、それで充分満足だった。
 
 そのころ、私が唯一怖れていたのは「死」だった。祖母を亡くしはしたが、彼女の死を理解していたわけではなかった。無論「死」そのものを理解していたはずなどありえないわけだから、ただ単に、恐ろしく感じていたのだろう。それでも「死」が避けられないものであることは知っていた。だから「それ」を遅らせる手立てを何とか考え出さなければならない必死になった。それで「自分を閉じる」ことにした。「ぽっかり」とした「空白」を抱いたまま閉じることにした。閉じてしまえば「死」すら恐ろしくなくなるのではないかと信じていた。誰にも求めず、誰にも与えなければ、と。
 
# by temanekihitsuji | 2009-03-17 15:02 | 裏ひつじ

降り立つところ 7

 あいかわらず河川敷を歩いている。もう五条をすぎたあたりか。
 「ぽっかり」としたものが、自分の中のどこかにあるような感触がある。
 膨大な量の物事を見ながら感じながら触れながら、別の重要であったはずのことを大量に垂れ流し失っている。失ったものの正体を知る由はないが、それが現実に否定しようもなく自分から抜け落ち、どこか知らない闇の彼方へと去ってゆくことは実感できている。なぜならそこには甚大で埋めようのない喪失感をともなう空白が生じるからだ。

 いつの頃だったか、はっきりとしない。おおよそがそういう日々の繰り返しだったから、きちんと記憶が整理されていない。たぶん・・・・・・・子供のころ。既にサイトウさんはおらず。母も別の人物と暮らしていた。私と病気がちな祖母との二人暮らし。
 
 十二月。隣家の子供がクリスマスツリーのイルミネーションを眺めながら、家族とケーキをほおばっているころ。狭く寒く汚れた部屋で、私は冷たくひからびたご飯に茶をかけてほぐし食べていた。夏休み。宿題の絵日記に記すことがなにもなく、図書館で借りてきた「ニルスの不思議な冒険」をそのまま写した。翌年には「少年探偵団」を写し、別の年には「ピーターラビット」を写し、どの年も職員室に呼ばれた。私としては異国の少年になれたり、明智小五郎をサポートできたり、野うさぎになれたりとかなり楽しめたのだが。大人は不快だったらしい。運動会や遠足の時は断じて仮病などではなく、本当に頭がわれるように痛くなったり、吐き気がしたり、下痢がひどくて便所から出られなくなったりして。ほとんど出席しなかった。
 私は自分の置かれた状況と、知ることのできる範囲で私とは違った比較的楽しげな子供達と自分の、どこがどう違っていて、何が原因してるのかを子供なりに必死になって考えた。そして得られた結論は「偶然」。「偶然そうなっている」だけだと思い当たった。篩にかけられている。私は他の子が落ちない網の目からこぼれ落ちているだけなのだと。


 
# by temanekihitsuji | 2009-03-17 14:31 | 裏ひつじ

降り立つところ 6

 鴨川の河川敷を南に向かっている。陽はすっかり沈みかなり冷たい風が吹いている。
 「彼女は去った」 その理由は思い当たらない。知るはずがない、というほうが正確か。彼女には彼女なりの事情があったろうが、私はそれを知らないし、知るべきでもない。
 「あなたは他人に何も望まない人ね。そしてそのぶん、他人に何もあたえない人」 かつて彼女にそう言われたことがある。意識したことはなかったが、指摘されればその通りだと思い当たった。
 あるいは少女が言ったように「ただ単純に去った」のかもしれない。そのほうが私としては納得がゆく。
 突然。
 単純に去る。

 彼女の消失だけが原因ではないが所在の無い気分で歩いていた。三条大橋のあたりでひどい臭いをかいだ。灯油の臭いか。対岸に人だかりがあり、その中心で若い男が上半身裸でファイアー・ダンスを踊っている。見上げれば橋の欄干からゲロを吐いている少女がいる。足元の草むらではカップルがハードペッティングに余念なく情熱を注いでいる。休みが終わり、学生達が街に戻ってきたのだろう。久しぶりの再開にテンションが上がり、踊り狂い、アルコールを飲み、婚う。どことなく現実離れした光景だった。天国か地獄、それともこの世界とはかけはなれた、この世界の拘束を逃れた一場面。鳥獣戯画の中の生き物達。
# by temanekihitsuji | 2009-03-17 12:01 | 裏ひつじ


紙のひと てまねき羊      紙でちっちゃいもの作ってます 純喫茶 洋食屋 銭湯が好き。


by temanekihitsuji

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